Street Medical Blog 発足

横浜市立大学先端医科学研究センター コミュニケーション・デザイン・センター(YCU-CDC)は、
Humanityを中心とした医療への発展を目指し、Street Medicalという標語の元に、
世にある事例・YCU-CDCのアイデア/活動を、こちらから発信していきます。

医療におけるシフト

これまで医療は「病(Disease)の回復」を目的として、2000年以上の歴史とともに発展を遂げてきました。
横浜市立大学先端医科学研究センター コミュニケーション・デザイン・センター(YCU-CDC)では、これからの医療は、
「ヒューマニティー(Humanity)の復権」を追究することを目的とした、より高次元の体系へ拡張していくと予測しています。
これからの医療において変革していくものは何か? 行動規範の変容として以下の4点を挙げます。

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そして、Humanity(ヒューマニティー)を中心とした医療においては、いままでの医学書には書かれていない視点からの実践が重要になってきます。
Disease(病)を対象とした医療においては、医科学が明らかにした再現性の高いエビデンスに基づいて、再現性の極めて高い固定された方法論を受療者に提供することが求められてきました。しかし、Humanityの復権を目指す医療においては、このような病の予防や治癒を目的とした実践は、医療の一側面に過ぎないのではないでしょうか。もっと言えば、健康か否か、病気か否か、治療か否か、などのいままでの医学的基準で、対象を区切ること自体がナンセンスであって、人間らしい生活をおくることを目的とした実践が医療のコアに変わっていくものと考えています。
このような背景を、Medicine for Humanity時代へのシフト、と定義し、それに対応する実践技法を、Street Medical と呼ぶことで、その可能性を社会に提案する次第です。

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Street Smartと医学

Book Smart(ブック・スマート) と Street Smart (ストリート・スマート)と呼ばれる賢者を形容する2つの概念があります。

Book Smartは、学識がある・高等教育を受けたタイプの賢者で、Bookは文字通り、手本・教科書・文献といった意味です。したがって、Book Smartは有名大学を卒業すること高い学歴を持つことで賢いと見られる、いわゆる、秀才型の人達のことを指すことが多いです。英語圏では、頭は良いけれど社会では成功していない、という意味になる時もありますが、これは、Book Smart型の人は実践経験が少なく、マニュアル通りのタスクはこなせるが、応用が利かない傾向があるためで、とくに、偏差値教育の中で画一的に育った高学歴者を想起した表現を揶揄して使われます。

近年の医学は、Evidence-based Medicine(エビデンス・ベースド・メディシン:科学的根拠に基づく医療)に基づいて発展してきました。平たく言えば、世界中のだれが、どこで、どのようにやっても、同じように効果が再現される医療の提供を目指すというものです。このためには、医学生や看護学生たちは、否が応でもBook Smart型の教育を受けなくてはなりません。科学に基づいたガイドラインに従って、フローチャートのような思考法を当てはめることで診断や治療を進めています。この姿勢はこれまで着実に成果を挙げてきましたが、細分化され、増えつづけるエビデンスを暗記しつづけることなどは難しく、多くのプロセスにおいて人工知能などのサポートが必要となる場面が増えてくるでしょう。医療の現場の変化から、医学においても、Book Smart型の人材育成のみに傾倒してはいられない切迫した時代になりました。

一方、Street Smartは、教育や学歴はなくとも、実体験や現場(ストリート)を通じて色々なことを学んで、高い能力や才能を発揮する人を表すことばです。現場から出発して成功を収めた叩き上げのような人に使われることもあります。アルバート・アインシュタイン、ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、マーク・ザッカーバーグなど、さまざまな偉人たちがStreet Smart 型の成長を遂げ、成功を収めたとも言われています。また、Streetを冠することで、それまでやや距離のあったものが、身近のなモノにさま変わりする、という例も、実はたくさん存在しています。例えば、ストリート・バスケ、ストリート・ダンス、ストリート・ファッション、ストリート・ミュージック、ストリート・フード…

どちらが良い悪いという議論はさておき、これからの医療を論じる上で、このBook Smart vs Street Smartの二項対立が、私たちが提案するStreet Medical を理解する上で、役に立つのではと思われます。つまり、これまでの医学教育はBook Smart型の教育であったのに対して、より身近な生活の場での実践を医学に還元するStreet Smart型の教育も取り入れる必要があります。

Street Medicalという概念の導入によって、無数の答えを求める広大な学問領域へと発展し、医療は無限の可能性を持つ領域になるだろうと考えられます。

ブログの狙い:Street Medical XXX

Street Medicalを考えるとき、日常を含めたさまざまな接点(タッチポイント、とよぶ)を組み合わせて考えると理解しやすいのではないでしょうか。これまでのMedical領域では、内科的・外科的治療による身体への介入手法が中心に研究されてきたのに対し、Street Medicalでは、日々の生活が介入先となり、その介入手法と医療の実践を追求することとなります。従来のように投薬や外科的アプローチもあれば、衣・食・住など環境へのアプローチもあるでしょう。ITツールやセミナー、イベントなどのアプローチ、はたまた、娯楽やゲームを通じたアプローチが必要になることもあるかもしれません。

これらのタッチポイントを、Street Medical XXXの「XXX」部分に当てはめ、YCU-CDCの活動とともに、世にある事例を紹介していきます。本ブログ「Street Medical Blog」もその一つです。Blogというタッチポイントを通して、Street Medical型の医療を世に発信していきます。