生活習慣病は、偏った食生活、運動不足など不健全な生活習慣が原因となる病気の総称である。個別には高血圧や糖尿病、脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常値)心疾患、脳卒中などがある。厚生労働省によると、日本国内の患者数は糖尿病、脂質異常症といずれも増加傾向である。正しい生活習慣へ改善すれば予防できる病気だが、現状はすでに病気の状態になってしまってから、改善指導が行われることが多い。そうではなく、生活習慣病にならないための予防策を実施する考える必要がある。なかでも糖尿病、高血圧、脂質異常症など多くの生活習慣病を招く要因とされている肥満にスコープをあてる。生活習慣病は自覚症状がほとんどないということからも、どうすれば大人になる前に生活習慣病の予防策を身につけることができるかが重要である。目指すのは、子どもの頃から「栄養バランスの取れた食生活」を知り、大人になったときに肥満にならない健康な食生活を実践できていることである。そこで予防策として、スーパーの買い物時に、親子で栄養バランスを学ぶことができるショッピングカートを導入する。日常生活で行っているスーパーでの食品の買い物の中で、食品棚と連動し、栄養カテゴリー別に案内されているショッピングカートに商品を入れていくことによって、栄養バランスを知り、自然に栄養バランスの取れた買い物をすることができる。子供のころからバランスの良い食事をとることを身につけることで、習慣化され、将来の生活習慣病患者の減少につながることを目指す。
AUTHORS
飯島慎二
ソフトウェアメーカー マーケティング部所属
INTRODUCTION
生活習慣病は、今や健康長寿の最大の阻害要因となっています。不健全な生活習慣が、高血圧や糖尿病、脂質異常症、肥満、心疾患、脳卒中といった病気を引き起こします。厚生労働省によると、日本国内の患者数は2014年に高血圧が1011万人、糖尿病317万人、高脂血症206万人と推計され、いずれも増加しており高脂血症は2.1倍に急増しました。日本では1980年代から若い世代でも発症が目立ち始め、90年代後半から予防を前面に打ち出す政策に比重が移っています。大人になってから発症するケースが多く、自覚症状がほとんどないことが特徴です。不調になり、病院に行った頃には重大な結果を招くといったケースも少なくありません。今回は生活習慣病の中でも、偏った食生活などが原因と考えられる肥満にスコープを当てその対策を検討したいと思います。肥満は、驚くほど多くの病気をまねく要因となります。例えば、骨や関節への負担から、腰痛や膝痛などの関節障害を起こしやすくなります。突然死の原因ともなる睡眠時無呼吸症候群にも大きな影響を及ぼしています。さらに、大腸がんや前立腺がんなど、多くのがんのリスクを高めることも指摘されています。肥満を放置していると、さらに生活習慣病を悪化させ、動脈硬化を引き起こすこともあります。結果、心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気へと進む原因ともなります。日本人には小太りの人は多いのですが、欧米人のような超肥満体の人はあまりいません。それは日本人の場合、もともとインスリンの分泌能力が低いため、少し太ると糖尿病をはじめとした生活習慣病になりやすく、それ以上は太れないためです。それだけに日本人は、肥満にはとくに気をつける必要があります。
正しい生活習慣へ改善すれば予防できる病気ですが、現状はすでに病気の状態になってしまってから、改善指導が行われます。実際、大人になり既に身についている生活習慣を改善するには本人の強い意志や努力が必要になります。大人になってから自身の習慣の改善を試みた人は実際その難しさが分かるのではないでしょうか…。自覚症状がほとんどないことや、大人になってから生活習慣改善を実践することの難しさという点から、必要な予防対策は、病気になる手前、子どものころから「栄養バランスの取れた食生活」を知り実践することであると考えます。肥満が導く大きなリスクを考えれば、大人になってからの改善では遅すぎます。子どものうちに正しい食習慣を身につければ、大人になったときには、自然に栄養バランスの取れた食生活を送ることができると考えます。
それでは、どうすれば子どもの頃に正しい食習慣を身につけることができるか?子どもが楽しみながら健康な食生活を体験することができるか?考えた具体的なアイデアは、スーパーの買い物時に親子で栄養バランスを学ぶというアイデアです。親子で食品を買い物中に、カテゴリー別に仕切られているショッピングカートに食品を分類し入れていくことによって、楽しみながら栄養バランスの取れた買い物をすることができます。この体験を積み重ねることで、子どものころからバランスの良い食事をとることが習慣化され、将来の生活習慣病患者の減少につながると考えます。また栄養バランスの取れた食生活について、親子で考えるきっかけの1つになればと思います。
METHODS
ショッピングカートの底には、栄養カテゴリーが記載され、カテゴリー別にネットで仕切られています。食品棚には、ショッピングカートとリンクした栄養カテゴリーや色が案内されています。スーパーでショッピングカートを押しながら、食品棚を回りこの栄養カテゴリー別に食品を入れていくことによって、栄養バランスのとれた食品を選択していくことができます。また、子どもはショッピングカートと同じ色の食品を選びショッピングカートに入れていくことでバランスの取れた食品選びを実践していくことができます。
(栄養カテゴリーの分類)
ショッピングカートの下に栄養カテゴリーで分類します。 例)分類は「3色食品群」
・タンパク質、ミネラル=体を作る基になる(赤)
・カロチン、ビタミン=体の調子を整える(緑)
・炭水化物、脂質=エネルギーになる(黄)
※その他栄養カテゴリー分類方法:「5大栄養素」や「6つの基礎食品群」
DISCUSSION
ショッピングカートやカゴと食品棚が連動することで、栄養に関する知識がなくても、色を合わせたり、ショッピングカートのカテゴリーに食品を入れていくことで、栄養バランスのとれた食事の買い物ができます。子どもにとっては楽しみながら、自然に食品を探しバランス良く食品を選ぶことができます。「スーパーでの買い物という日常生活の中で、健康な食生活のために親子で栄養のバランスを考えることができる」ことが、今回提供する体験価値です。この体験を実現するためのショッピングカートの機能やユーザーインターフェース等は今後さらなるユーザービリティテスト等を実施し、改善を検討して参ります。また食品の分類方法も1つではなく、栄養素をはじめ、また家庭にとってなじみのある分け方、記号化も考えられるかと思います。今回の施策により、子どもが正しい食生活を身につけ、習慣化することで、大人になっても自分の健康を自分自身で守ることができるようになるのではないでしょうか。このような子どもが増えていくことで、将来の生活習慣病患者の減少につながると考えます。
REFERENCE
- 厚生労働省(最終閲覧日:2020年11月27日)
- 一般社団法人 日本生活習慣病予防協会厚生労働省(最終閲覧日:2020年11月28日)
- オムロン株式会社 生活習慣病ガイド厚生労働省(最終閲覧日:2020年11月28日)
- 医師から学ぶ!子どものうちに身につけておきたい食習慣厚生労働省(最終閲覧日:2020年11月28日)
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