Street Medical Talks 10組のプレゼンテーションまとめ

横浜市立大学先端医科学研究センターコミュニケーション・デザイン・センター(YCU-CDC)と東京デザインプレックス研究所(TDP)は2021年12月26日、Zoomオンライン配信にて、医療×デザインをテーマにした新しい医療・医学のカンファレンス「Street  Medical  Talks」を開催しました。

当日のStreet  Medical  School受講生による動画・ポスターによるプレゼンテーションのコメントを発表順に紹介します。

カンファレンス全体のレポートはこちらの別記事でご覧ください。
これからの医療・医学を考えるカンファレンス「Street Medical Talks」開催

まずは口頭プレゼンテーションによる3組の発表です。

ハッピーで育てる「ナースの木」

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看護師のやりがいを可視化する木のオブジェの提案です。アートとして病棟を彩りながら、看護師の忙しい業務の中での振り返りのきっかけを作り、レジリエンスを高めるためのプロダクトです。

武部氏、町さんからは、電子カードや大掛かりな院内アートと比較したコミュニケーションツールとしての「取り入れやすさ」を評価するコメントが寄せられました。内田さんからは「病院以外の職場でもレジリエンスがあり、例えば刑務所で働くカウンセラー同士がお互いに助け合う制度や研究もある。異分野を分析してみると新たな着眼点が見つかるのでは。」とアドバイスをいただきました。発表内容の詳細はこちら

スクールカウンセラーのブランディング #まだ知らないでしょ、みんなの味方。

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スクールカウンセラーの認知度と親近感を高めるためのブランディング企画です。「SNS映え」を意識したポスターやトイレの鏡の装飾などで生徒たちへのコミュニケーションを図ります。

内田さんはスクールカウンセラーに限らない「学校の外の世界を教える大人」の重要さを指摘。町さんからはセーフティネットとして、学校の連携を強める企画の意義について後押しする意見が寄せられました。武部氏は「相談室に行った先はメディカルケアしかないというイメージが抵抗感を高めている印象がある。生徒を他のコミュニティや外の世界へ繋ぐ役割が重視されれば、スクールカウンセラーの業務や名称の再定義につながるかもしれない。」とコメント。発表内容の詳細はこちら

経口補水容器 DHMO BOTTLE

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尿路結石症予防のためのウォーターボトルの企画です。薬品のようにデザインされたボトルで「水を飲む」という行為に意識を向けさせることをねらいます。

各コメンテーターからは、「スポーティなボトルデザインはモチベーションがある層には効果的。その上でストイックではない層にも目を向ける必要があるのでは」と意見が寄せられました。町さんからは「ウォータボトルのアイデア商品は現時点でもたくさんあります。それらに負けないように、ボトルの目的を絞ることや続けるための仕掛けの一捻りが重要。」とアドバイスをいただきました。発表内容の詳細はこちら

続いてポスター発表へのコメントです。

ALCOHOBBY

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アルコールと適切に付き合っていくことをテーマにした1日1本のサブスクリクションのドリンクボックスの企画です。お酒を楽しむコンテンツとともに、休肝日の組み込みやアルコール依存の問題も扱うなど、飲み方をコントロールするための仕掛けが考えられています。

町さんは「お酒はラベルなどの視覚情報でも楽しむことがある。隠すだけではなくてラベルのプラセボ効果で楽しむというのもありかも。」とコメント。内田さんからは「私は少しずついろんなお酒を楽しみたいタイプ。ターゲットをどんな人にするか、誰が主体でやるのかで見せ方が変わってくる。」と多様な楽しみ方の中での展開方法について、意見が寄せられました。発表内容の詳細はこちら

介護スタッフと利用者のためのレターセット『ふむふむ』

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介護スタッフと利用者の信頼関係を強めるための、手紙をモチーフにしたコミュニケーションツールです。簡易なフォーマットにすることで、パーソナルな情報や想いを引き出し、有効なコミュニケーションにつなげます。

町さんからは、「今は介護現場のデジタル化は当たり前の時代なので、アナログの手触りを残しつつも、デジタルでの展開は必須。また、手紙を完成させる過程で家族と本人のコミュニケーションツールにもなるいいツールだと思う。」と現場の視点も踏まえた意見をいただきました。内田さんからは「保育の現場にも共通している部分があるので、一度どのようなコミュニケーションが行われているかをリサーチするといいかも。」とアドバイスをいただきました。発表内容の詳細はこちら

路線検索+1

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車椅子利用者が路線検索の延長で、簡単にバス会社へ利用連絡ができるアプリケーションです。バス会社と車椅子利用者の連携を促進することで、外出控えの解消を図ります。

内田さんからは「ノンステップバスの配車だけがソリューションになっているが、他の乗客に働きかけるなど、人の力をどう活かすかというという視点もStreet Medicalにおいては大事。」とアドバイスをいただきました。町さんは「実は車椅子ユーザーにとって一番利用しにくい交通機関がバス。心理的なハードルを下げるために運転士さんの顔が見えるなど、人と人の繋がりを付加価値として足すと外出が楽しくなるのでは」とコメント。発表内容の詳細はこちら

目指せリンパマイスター!リンパ浮腫のセルフケアのための計測リングと日めくりカレンダー

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リンパ浮腫のセルフケアのための計測リングと日めくりカレンダーのセットです。自身に合ったセルフケアの習得だけでなく、医療従事者とのコミュニケーションに役立つ情報を得られる仕掛けも組み込まれています。

町さんからは「医療費助成の働きかけや保険適用もされているが、全員が適切なケアを受けられていないのが現状。医師ができないのであれば、周りの職種からリンパ浮腫のケアを進めていく必要があり、その意識を高めるプロダクトだと思う」とコメントをいただきました。本企画を提案した受講生は「リンパ浮腫は医療現場でも認知度が低い。本プロダクトで、がんの手術後のむくみのケアを助けるとともに、多くの人の理解を得ることで患者の心の負担が軽くなれば」と実装への意気込みを語りました。発表内容の詳細はこちら

カムカム定期便:噛む力のチェック&トレーニングができる美味しい贈りもの

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口腔機能の低下(オーラルフレイル)予防のための「噛む」食品の定期便ギフトの企画です。咀嚼力を判定するガムと一緒にユーザーの咀嚼力に適した食品を届けることで、食べることを楽しみながら口腔機能のチェックとケアが行えます。

武部氏は「咀嚼を測るガムがあること自体を初めて知った。ヘルスケアの入口としてのガムという指針でサービスを組んでもいいかも。」と咀嚼ガムの可能性についてコメントしました。町さんからは「噛む力がわかるだけでなく、離れた家族とどう楽しむかまで、医療が介入してもいいと考えている。医療の領域を拡張できるサービスになると思う」と食べる環境を豊かにする視点からアドバイスをいただきました。発表内容の詳細はこちら

アピルン – 親子でじんわりあったか保湿

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小児の保湿の時間を楽しくすることを目的とした、浴室や脱衣所用のポスターと保湿剤を温めるラバーダックのセットです。アピルンというキャラクターの保湿のストーリーをお風呂場で展開し、保湿への誘導と負担低減につなげます。

内田さんからは「保湿を習慣づけられる年代に着目してターゲットを決めると、そこに集中したコミュニケーションを考えられるのかな。」とアドバイスをいただきました。町さんは「子どもをお風呂に入らせるのは本当に大変。子どもの自立を促してお母さんを助けるようなポスターの文言や、年齢の成長に合わせたバリエーションもあると楽しい工夫になる」とコメント。発表内容の詳細はこちら

置いて見る箸

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持ち手のデザインが変化する箸で、食べる手を休めるきっかけを作り、早食いを防止する提案です。手の温度によって持ち手に描かれた虹が隠れ、箸を置くタイミングを知らせます。

武部氏は「箸に囚われずに、お盆なども含めたカトラリーのセットとして考えてもいいのでは」とコメント。町さんからは「箸はデザインバリエーションも広げられるし、持ち運びもできるからいいと思う。人は誰かと一緒だと自然とゆっくり食べるようになるので、自宅や職場などで誰かと楽しめるような工夫があるといい」とアドバイスをいただきました。発表内容の詳細はこちら

医療の新しい価値を考える「Street Medical Talks」

本カンファレンスでは、Street Medical Schoolの受講生がチームで取り組んだ新しいアイデアを通して、受講生と専門家の意見の交流が生まれる場を作ることができました。今年度も完全オンラインでの開講だったのにも関わらず、受講生の多様な背景や視点に加え、実装への意気込みも感じられる提案が揃いました。本日受けたフィードバックは、オンラインで試行錯誤して作り上げた企画を、実世界へ持ち込むための大きなヒントとなったのではないでしょうか。
今後、医療や介護、デザインやテクノロジーなど、様々な分野や領域を横断し「Street Medical」のアプローチによる新しいアイデアを社会実装する担い手を増やす大きな一歩となりました。